Reality 第二章 エリス

リアリティ-アイキャッチ

大学にスキップ(飛び級)するほどの天才少女エリス。
彼女は念願の日本への旅が決まったことで、期待に胸を膨らませていた。

この物語はフィクションです。劇中に登場する人物・名称・技術・解釈などはすべて架空のものです。また、実際に存在する地名・建築物などを使用しておりますが、実在のものとは一切関係はありません。

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Extreme Imagine Online

とうとう念願の日本に行きが決まった。
娘の遠方への一人旅をパパは最初はかなり反対したけど、ママが味方してくれたこと、そして大学にスキップして実績もできたので渋々OKしてもらえたのだ。

ママにユートのことを話しておいて正解だった。
彼の真面目で優しい性格はママにとっても安心材料のようだ。

なぜ日本に行きたいかって?
それはもちろん日本文化も好きだけど、ユートの存在が大きい。
ユートとはハイスクール時代に始めたFPSOrder Of Disteny」で知り合った。

「エリオット」というゴツくて勇ましいアバターなのに、初心者丸出しのプレイだった私にいろいろ教えてくれたメンターがユートだった。

ネットでの情報で女だと言うことを知られてしまうと、いろいろ面倒な、場合によっては怖いことも起こると言うことを聞いていたので「これなら女とは思われないだろう」と正直やりすぎというくらい振り切った外見にしたし、ボイスチェンジャーで声も低くした。

そんなエリオットだけど、ユートは臆することなく接してくれていた。

しばらくしてユートに「Extreme Imagine Online」に誘われることになる。
EIのことはアメリカでも有名だったけれど、オンラインRPGは初めてだったし、日本人の多いコミュニティでやっていけるのかという不安もあった。

「大丈夫だよ。俺がサポートするし、みんな偏見持ってない良い奴ばかりだしさ」

ユートの「大丈夫」にはいつも励まされてきた。
この時もこの一言がEIOを始めるきっかけになったのだと思う。
ここでもまた「エリオット」にすることにした。まだネットでいろいろさらけ出すのは怖かった。

そして気がついたらまた絶対女だとわからないゴツイキャラメイクになっていた。

ゴツイなら前衛職が似合うところだが、 選んだのは精霊術師。
精霊魔法を使う後衛の攻撃職だ。

実は私は接近戦が苦手なのだ。
ターゲットを切り替えるのにマゴマゴしているうちに戦闘が終わってしまうし、なにより敵を真近に直視するのが苦手、ハッキリ言ってしまえば怖い。
ゾンビ系の敵も多いしね。

少し日本語の勉強になるかと思ってユートに日本映画を尋ねたところ「サークル」をオススメされたので見てみた。
これが…、いわゆるジャパニーズホラー作品だったので、怖くて失神してしまったほど私はホラーが苦手。

それを知らなかったユートには、あとで平謝りされたけどね。

キャラメイクができて初めてEIOに降り立った時、ユートは真っ先に迎えに来て、彼の主宰するクランを紹介してくれた。

「コイツはエリオット。アメリカ人だけど俺の親友なんだ」

とみんなに紹介していた。親友と呼んでくれてとても嬉しかった反面、ちょっとモヤっともしていた。

そう、このとき気づいたのだけれども、私はユートのことを男性として好きになっていたのだ。でも「エリオット」は親友。今はまだ難しいかなとも思っていた。

日本語をちゃんと勉強しようと思い始めたのもこの頃。
それまではいい加減な日本語だったり、ユートが無理して英語でしゃべってくれたりしていたのだけど、ユートに無理ばかりさせるのもいやだったし、何よりあの子と対等な位置に立ちたかったのもある。

ユートは最前線に立つ神聖騎士だった。
敵の攻撃を一身に受けパーティを守るいわゆるタンクだ。

攻撃職をしているとたまに敵のターゲットがこちらに向き、ダメージを受けてしまうのだが、ユートは絶妙なヘイトコントロールで後衛に一切ターゲットが向かないことで定評があり、とても頼もしかった。

戦闘を行うにはタンクとアタッカーだけでは成り立たない。
もう一つ重要な役割がヒーラー。パーティを回復することで戦闘を継続することができるのだ。

うちのクランでもっとも優秀な治癒術師が黒髪でショートヘアのサクラだった。
とても上手にパーティを回復し、タンクであるユートととても相性が良い。

私も彼女にはとても助けられたのだが、なんというか、プリンセス、というのだろうか。
彼女は私とは逆に女という事を前面に出したプレイスタイルだった。

節目節目にメンバーになにかしらプレゼントを贈り、誰にも愛想良く優しく振る舞うため、とてもファンが多いのだ。

「サクラ、そこまで女の子っポイ行動すると、怖くなイ?」
「心配してくれてぇ、ありがとうございますぅ^^」

私はなぜ彼女がそこまで女だという事をさらけ出せるのかと興味半分、心配半分で聞いてみた。

「大丈夫ですよぉ?これでもぉそれなりに距離感もってますしぃ^^」
「距離感」
「それにぃ、何か有ったら騎士様がぁ守ってくれますよねぇ^^」

とニッコリしながらユートの方をみるサクラ。それに気づいたユートがデレっとしていた事にイラッとした。

このままだとサクラにユートが取られちゃう!

そんなジェラシーから勢いで作ってしまったのが、治癒術師の「エリス」
容姿も現実の私にかなり似せて作ったが、本名にしてしまったのは失敗だった。
恥ずかしくてユートにもクランメンバーにもこのアバターは見せていない。

ユートに自分が女だということも、好きだという事も打ち明けられないまま月日が流れ、私はスキップして大学生になり、研究でそれなりの実績を積むことができたので、日本行きについてパパも説得する事ができた。

研究の一環と嘘をついちゃったけどw

ユートはショートの女の子が好きみたいなので、髪型もセミロングから思い切ってショートに変えたし、あとは直接会って頑張って気持ちを伝えよう。

「え?マジでエリオット、日本に来るの?」
「うん、スキップして大学生になれたシ、研究もひと段落したしネ」

「そうかぁ?楽しみだなぁ。どこか行きたい所ある?」
「ユートが良くシンジュクの話してくれたカラ、そこに行ってみたイ」
OK!今ちょうどVRのイベントやってるからそれも行こうか」

「それはイイネ!ぜひ行こウ!」
あ、リアルで会うわけだから言っておかないと。

「リアルのボクを見てもビックリしないでネw
男だと思っていた相手が女の子だったらビックリするだろうけど、これくらいのイタズラは良いよね。

ついに日本へ!

ケンブリッジ空港からナリタ空港までは16時間程かかった。
初めての1人旅、初めての日本、そして初恋の人との出会いに私は期待に胸を膨らませる。

シンジュクで会う日は明日。
ユートのアバターは割と本人に似ているという話なのでカワイイタイプだと思う。
アメリカンなゴツイ人たちを見なれた私には新鮮だった。

最初ユートはクランみんなで歓迎したいといっていたけど、そこにはサクラもいるわけで…まったく!女心がわかってないなあ…!
と憤慨したものの、相手は私を男だと思っているので無理もないか。

長旅で疲れてるだろうからという理由で、その日は2人だけで会うことにしてもらった。
もちろんせっかく日本に来たのだし、クランのみんなにも会いたいしね。

ユートのことではライバルだけど、サクラの事は嫌いじゃない。
だからリアルのサクラも見てみたいし…。

翌日。ユートに会う日。
昨日は時差と興奮であまりよく眠れなかった。

今日は10時にシンジュク駅で待ち合わせて、早めのランチを食べ、例のVRのイベントを見たあとトーキョー観光に付き合ってくれるそうだ。

時間ギリギリまでホテルにいるのも落ち着かないので、待ち合わせ場所に移動して時間まで待つことにした。
ユートの好みに合わせて髪型を変えたけど他はどうだろう。気に入ってくれるかな。

30分も前に着いてしまったが、土地勘もないのでこの場所で待っていると、
「金髪のおねーさん、かわぃいねぇー!一瞬でもいいからお茶しない?」
と声をかけられてしまった。

これが『ジャパニーズ ナンパ ギャルオ』と感動したが、英語でテキトウに返事をしていたらいつのまにか消えていた。

そんな事をしているうちに、時間は10時を過ぎていた。
ユートは基本的に時間には正確な人のはずだし、約束を破るような人でもない。

日本の交通機関も時間に正確だとよく聞くので、何かあったのかもとメッセージをとばしてみる。

返事が無いまま11時になってしまった。さすがにおかしい。
もしかして私が場所を間違えた?

別の場所だったとしてもどこに行けば良いのかもわからない。
直接見てビックリしてもらうつもりだったが仕方ないので携帯に電話してみる。
しかし繋がらない。

どうしょうもないのでマナー違反かもしれないけれど、彼の実家に電話することにした。

ユートはどこ?

「はい…瀬島でございます…」
ユートのママだろうか、年長の少し疲れた声の女性だった。

「アノ、ワタシ、ユート君のアメリカのトモダチで…」
「あ、あなたが…男の人ってきいてましたが」

「スイマセン、本当は女デス。エリスといいマス」
「そうでしたか…私は悠斗の母の美悠紀です…」

「ハジメマシテ…それで、ユート君ですが…」
「悠斗はいま、病院に…入院していて…」

病院?!どうして?!
飛行機に乗る前にメッセージのやり取りした時には病気の話なんて何もなかった。
もしかして事故?!…そんな…。

一人でぐるぐる考えているとユートのママがさらに続ける。

「私も良くわからないのですが、新宿でゲームをしていたら事故にあったとか、VRとか言うそうなんですが…」
VR?今日行く予定だったイベントかしら。なんで私と一緒じゃないときに行ったんだろう…。

「エリオットさん、いえエリスさんですね。と出かける前の下見をすると言って出かけた日だったんですが…」

下見に行って事故に合うなんて…もう!
「ユートのお母サン、ユートに会えますカ?病院はドコですカ?」

「帝王大病院ですが…場所わかりますか?」
「…ワカリマセン、日本に来るの初めてなのデ…」
「じゃあ私が案内しますので一緒に行きましょう」

ということで、私はそのままユートのママに迎えに来てもらい、帝王大病院に向かうことになった。ユートのママから話を聞くと、ユートは原因不明のこん睡状態になっているそうだ。

せっかく会えるのに、お話することもできないなんて…。

またもぐるぐる考えながら1時間半ほど車に揺られていると、帝王大病院に到着した。
帝王大学の広いキャンバスの隣に併設された附属病院。以前大学の教授に日本で有数の最先端医療を扱う病院だと聞いたことを思い出した。

ユートのママに案内され病室に向かうと、そこには穏やかに眠っているユートの姿があった。本当に以前から見慣れているアバターにそっくりだった。

私はユートの手を握り、話しかける。
「ユート、エリオットだヨ、日本に来たんだヨ…」

しかしユートは全く反応しなかった。なぜこんなことに…。

「失礼します。」
唐突に病室の戸が開き、ドクターと思われる白衣の人物が入ってきた。

「脳神経科の市川といいます。ご家族の方ですね?」
「はい、悠斗の母です。こちらはお友達のエリスさん」

「そうですか、少しご説明したい事がありますので、よろしいですか?」
「ア、   ワタシもお話聞いても良いですカ?」

「お母さんがよろしければ?」
「構いません。エリスさんのことは悠斗も親友だと話していましたし」

「…」
ママにまでそう言っていてくれていたことに少し涙腺がゆるんでしまったが、そんな場合ではない。

Dr.イチカワはこのように説明していた。

「悠斗君はVRイベントに参加していて、最初は楽しんでいたそうなのですが、途中からかなり脈拍が上がり、脳波が乱れた状態になっていたようです」

「内容はドノようなものだったのですカ?」
「なんでも、東京をバードビューで見るというアトラクションになったようです」

ユートは極度の高所恐怖症だといっていた。
かなりの緊張状態になっていたのだろう。

「その時、突然電力不足になったようで、一斉にVR機器が強制終了したようです」
「他の参加者は気分が悪くなる程度だったようですが、悠斗君は気を失っていてそのまま今の状態が続いています」

「光過敏性発作ですカ?」
「よくご存じですね。その疑いがあります。ですがここまで長く目覚めないので…」
やはりそうだった。そういうことなら私ならなんとかできるかもしれない。

「ユートの症状、ワタシならなんとかできるカモ」
「えっ?」
Dr.イチカワとユートのママが怪訝な顔で私を見ている。

「ワタシは、エリス・ハートフィールドとイイマス。大学で脳科学の研究をしていマス」
「エリス・ハートフィールド…?あのドリームキャッチャーの?」

ドリームキャッチャーとはインディアンの夢を変える力を持つといわれる装飾品にちなんで、私と教授で作り上げたシステムだ。
VR関連では先端を行っているため、教授とともに私の名前もしばしば挙がることがある。

夢を変えるというほどの力はまだないが「他者の夢を共有する」ことができる。
これを使ってユートの夢を共有して、私がユートの意識にダイブすることができれば。

私は急いで教授に電話する。

「エリーどうしたんだ?こんな真夜中に」
「教授、日本の帝王大へアクセス権を発行してください。ドリームキャッチャーを使います」

「無茶いわないでくれ。大学はいま閉鎖されてる時間だよ?」
「私の親友が…、いえ私の『彼』が意識不明の重体なんです!」
「そうか、仕方ない。エリーの恋人が危険というなら、なんとかしてみよう」

ドリームキャッチャーはプログラム本体があるサーバーと、一般的なVRマシンに脳波センサー《私たちはもっと進んで思考波というものを検出できるようにしているが》、視覚・聴覚・触覚・嗅覚を脳に伝える神経パルスジェネレーターが付属したもので構成されている。
SFノベルにあるようなフルダイブマシンと言えばいいだろうか。

ユートがVRに興味があるというので、研究中のそれを2台コッソリ持ってきていたのだ。

教授に押し切ってもらい病院とユートのママを説得してDr.イチカワにベッドをもう一つ用意してもらった。

マシンの一つをユートの頭部に装着し、もう一つは私が装着した。
ダイブするアバターは…EIOにリンクして前に作った「エリス」を使うことにする。

教授から準備ができたことを確認したらユートに並んで横になりユートの手を握って、
この言葉を発する。

Dream Catcher StartUp Execution. Diver ID Ellis Heartfield!

こうして私はユートの「夢」にダイブした。




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