イラストの料金はどう決まる? 40年と30秒の話

イラストの料金はどう決まる? 40年と30秒の話

おはようございます!セッジです!
今回はNHKで放送された、
「3万円相当のイラストが2500円になってコストダウンできた」
という話題の続きです。
こんにちは!トラノです!
なんかまだ落ち着きませんね。なんか判ってない人多くて!(怒)
気持ちはとても良くわかる…。
でも感情で言っても理解はしてくれないだろうなとも思うんだよね。


この情報がテレビで放送されるやいなや、怒る人、悲しむ人、冷静にイラストの行く末を見守る人…。

イラストを仕事としている人たちの間では様々な感情がうずまいていました。

そもそもイラストに限らず、美術や芸術的に表現されたものの価格はどのように決まるのでしょうか?
ピカソのエピソードが今回の件のポイントを突いているかもしれません。

▼前回の記事はこちら
クラウドソーシングサイトを閲覧していると、あまりの低価格にデザイナーとしてとても驚くことがあります。 「クリエイティブ作業」も労働である以上、もう一度料金について考えてみた方が良いのでは無いでしょうか?
【この記事は2019年2月6日に更新されました】

”いや、40年と30秒かかっているんだよ”

絵の価値についての本質的なものを説明するときは、
よくピカソのエピソードが引用されることが多いようです。
ピカソが食事をしていると、
「お礼はちゃんとするから何か描いてほしい」
とファンの女性がレストランのナプキンを差し出した。
ピカソは絵をサッと描き上げ、女性に1万ドルを請求した。
「描くのに30秒もかかっていないのに!?」
と女性は驚き尋ねると、ピカソはこう答えた。

「いや、40年と30秒かかっているんだよ。」
このエピソードを調べてみると女性がウェイターだったり、食事ではなく町を歩いていたとか、40年が30年だったり、諸説あるので真偽は不明です。

このエピソードを引用して言いたいことは、絵の単価というものは、
実際の作業時間+道具(画材または機材)のコスト+経験(練習や取材含む)
によって発生するものだと言うことです。

デジタル技術の発達によりいろいろなことが安くできるようになっているのだから、イラストの単価が下がっていくのも当然ではないかという意見もあります。

うなずける部分もありますが、そこで「いろいろなモノが安くできるようになったのはなぜか」ということを考えてみて欲しいのです。

答えは「自動化と効率化」です。

自動的に処理できるということは工程が省略されて効率化されます。
いくつか工程が無くなった事によってかかるはずだった人件費や機材費がかからなくなり、コストは安くなります。

デジタルイラストの場合はどうでしょうか?
アナログと違うのは絵の具+用紙代がかからないということ、絵の具を乾かす時間がいらないということは効率化された部分です。

それ以外の工程だと、絵の作業の本来の部分「人間が道具を使って絵を描く」ことはなんら自動化されていません。ほとんどコストダウンになっていないのです。


イラストの料金はどう決まるのか

上で書いたように本来は、実際の作業時間+道具のコスト+経験=絵の料金です。

それを一旦置いておいたとして、時給換算で考えてみましょう。
例としてはフライヤーに載せるカットイラストの制作です。

受注者は作業が速い人で、かつ発注者もレスポンスが良く、修正なしと仮定します。

発注者との打ち合わせ→ラフ制作→フィードバック→本制作→検収→納品

こんな感じでしょうか。これを時間で割ってみます。

打ち合わせ=1時間、ラフ制作=1時間、フィードバック=1日、本制作=2時間

フィードバックを待っている間は何も作業できませんので、フィードバックの受け答えで1時間と考えておきます。
検収以降は修正がなければ手を離れますのでそれも入れません。

そうすると5時間です。
いま東京でのアルバイトの平均時給が1000円超ということですから、最低でも5000円ですね。

2500円というと時給500円になってしまうわけで、少なくとも特殊技能を使って作業する人はこの平均時給よりも下回ってはいけないと思います。
※アルバイトをバカにしているわけではありません。
 アルバイトも特殊技能・資格を必要とするものなら高い時給になるはずです。

また、そこにこれまでの経験でつちかってきたスキルが加味されるわけです。
そのため以前頼んだ人は3万円だったという料金は高いとは言えないと思います。

セッジも以前一般誌やPC雑誌でイラストを担当していたときは、
100mm四方のモノクロイラストで5000円くらい、カラーイラストで5000~10000円くらい。

A4の1P相当のイラストで7~10万円、見開きだと15万円までが規定だと編集部から言われていました。

これはデザイン・イラスト業界全体でみると高い方ではありません。

雑誌は元々予算が限られているのでこのくらいですが、広告やPRに使用される場合は予算がもっと出ることもあり、A4の見開き(A3サイズ)で30万円ほど頂いたこともあります。


クラウドソーシングのあり方

前回のレストランと牛丼のたとえと逆の話になります。

価値の高い絵を描ける人はたくさんいます。
しかし、そういう人が安さを求めている場所に来て

「自分は10倍の価値があるものが提供できる。だから10倍の金額にしてほしい」

といったらどうなるでしょうか?
価格感が違うので、あえてその人に頼もうとは思いませんよね?

そういう意味では安い案件の発注しかない、そしてそれを請けても良いと考える人しか残らない、そういう場所になってしまうはずです。

たとえばココナラは、最低単価500円~で告知しています。
したがって、そういった価格を求める人が集まってくると思います。

ココナラのビジネスモデルとしてはそれで良いのかもしれません。

他のクラウドソーシングはどうでしょうか?

安い単価ばかりの案件では利益が出にくいと思います。
高い単価の案件の発注が発生したとしても、上記のように安い案件ばかりに嫌気がさして撤退する人が増えていけば、受注できる人がいないという状態になります。

受注できる人がいないのであれば、発注する意味もない、ということで高単価を発注する可能性のある発注者も撤退してしまうことになると思います。

クラウドソーシングの本来の役割は、単価を安くするということではないと思います。
  • 会社に所属しなくても仕事ができるようにしたい
  • イラストを描けるけど発注元がなかなか見つからない
  • 業種が違いすぎてイラストを頼みたくてもどこに頼んだら良いのかわからない
イラストを例に挙げましたが、これはいろいろな業種・成果物に当てはまるでしょう。
こういったことを、ネットワーク技術を使って解決するのが主目的だと私は考えます。

先日、こういう問い合わせがありました。

「歌っている曲に合わせて動画を付けてほしい」

というものでした。

例に漏れず低単価の案件なのですが、曲を聞くと著名な歌手の曲をまったく関係ない人が歌っているという内容でした。

報酬の事は置いておくとしても、これに動画をつけて作品を作ったら動画制作者も揉め事に巻き込まれてしまう可能性があります。

ネットワーク技術によっていろいろ敷居が低くなるのは良いことですが、無法地帯になってしまうのは遠慮します。

自らの特性で生きられる世の中へ

ということで、今回はNHKの番組を発端とした話題を取り上げてみました。

ある意味ではイラストの価格がどう成り立っているのかというのを知ってもらうチャンスでもあるのかもしれません。

この記事を読んでいただいたあなたが、クラウドソーシングを利用してお仕事を発注しようと考えているとします。

その場合、イラストが制作される工程をまず考えていただき、その上で料金を決め、できればイラストレーターと金額を相談していただければ幸いです。

イラストに限らずクリエイターが「自分が作ったものの対価で生活できる世の中になること」を願ってます!
クラウドソーシングなどでもちょっと上乗せしてあげるとか出来たら良いですね。
では今回はこの辺で。また他の記事でもお会いしましょう!
おつかれさまでした!



ブログランキング参加中!
このブログが役に立ったと思ったら、投票をお願いします!

にほんブログ村 デザインブログへ



コメント