動く漫画:モーションコミックとは?

eyecatch:ぱくたそ

皆さんはモーションコミックってご存知ですか?ご存じない?
では「動く漫画」ならどうでしょう?アニメのこと?いやいや…


おはようございます!
今回はボクのモーションコミックについての思い出を語ってみたいと思います!

モーションコミックとは、漫画家の描いた絵に動きをつけ、声優の音声やBGMを入れ、演出した動画のことです。

漫画を動画にすることで普段あまり漫画の読まない人にも作品の魅力を伝えられる技法として注目されており、静止画である漫画と動画であるアニメーションの中間形態とも言えるコンテンツです。

モーションコミックの例には以下のようなものがあります。


このアニメビーンズにて好評配信中の「もしもし、てるみです。」制作に参加しています。
セッジ担当は第9話と第11話です!

「新しいコミックのカタチ」展

※登場するイベント・企業・人物は全て仮名です。モーションコミックの作成についてはほぼそのままですが、会話内容その他は実際とは少し変えております。

1990年代のある日、専門学校を卒業し昔からのバイト先だった映像制作会社アライブにデザイナーとして就職した私は、なかなかデザインの仕事が受注できないため、映像案件用の美術素材を作ったり、ビデオのジャケットを作ったりして過ごしていました。

そんな中、アライブでよく外注としてお仕事を依頼しているプロデューサーエンヤさんから連絡が入ります。

セッジくんさぁ~漫画描けたっけ?

漫画風な絵なら描けますけどストーリーは無理ですよ?

あっストーリーはいらないの。
漫画家さんが描いた絵をチョイチョイっと修正するだけだから!

「アライブ」としては現状デザイン案件が無く、他部署のちょっとした美術要素を手伝わせるしかなかったデザイナーをそのままにしておくわけにもいかず、

「詳細聞いて仕事としてやれそうならなるべく請けとけ。」
という一声でしばらく出向することになりました。

エンヤさんの事務所に向かうと、そこにはエンヤさんとこの案件の進行管理をしていた穂波さん(美人!)の2人がいました。

穂波さんは最初はエンヤさんの会社の社員さんかと思っていたのですが、本来はフリーランスの方でした。

それで、どんなことをやるんですか?

デパートで漫画のイベントやるんだよね。でもね!ただの漫画じゃないんだよ!動く漫画なんだ!
えっ…?それって、アニメでは…?

いやいや!違うの!アニメみたく全部の絵を動かすんじゃなくてねー!コマを切り分けて、それをスライドインとかフェードインとかして演出つけて、声優さんに声あててもらって動画にするんだよ!
へえー!面白そうですね。そのイベントっていつやるのですか?
うん、夏休み中なので8月!

え…3ヵ月無いじゃないですか…!(その時5月)

原画加工作業

実際のところ、どのような作業内容だったかと言いますと、有名どころの3人の漫画家さんたちの漫画の一話分(各30ページ程度)の生原稿を預かり加工するという形です。

預かった原稿は週刊連載していた分の一話を抜き出しているため、フキダシのセリフは前後の話数につながる状態になっています。

しかしイベントは一回こっきりのため、前の話が判らないと今見ている話が判らないという状態ではダメなので、その一話の中でひとまずの決着がつくように加工する必要がありました。

じゃあ、いま貼りついているセリフを消して、文字を張り替えれば良いですか?
いやいや!アフレコするから、フキダシ自体を無くしてほしいの!
えっ…フキダシ消したらそこには背景無いですよね…?

うん、だから背景も漫画家さんに似せて描いて欲しいんだよね

絶句しました(笑)
これ、今であればPhotoshopなどを使えば簡単…とは言えないものの、無茶な話では無いかもしれません。

しかし当時はアナログで作業を行うしかありませんでした。
(このときはアライブはまだMacもPhotoshopも導入していません)

漫画家さんの生原稿をいじるわけにはいきません。
まずはなるべく精度の高い方法で複製し、そこからフキダシとセリフを除去、さらにそこに本来はあったであろう背景を描きます。

タッチなどを似せて描けたとすると次に合わせないといけないのが、スクリーントーン(アミ点)です。

漫画はカラーページ以外はすべて黒のインクしか使えません。
そのため陰影を表現したい場合は、このアミ点で処理をすることになるのですが、忙しい漫画家さんから情報を貰うこともできません。

したがって、画材屋さんで原稿で使用しているものと同じか似たトーンを探しまくることになりました。

3人の作家さんの漫画、各30ページ分くらいだったでしょうか、その加工作業になるので、ちょっと一人で作業できるようなものではありません。

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原画加工マン集合

物理的に不可能な量だったので、専門学校時代の友人と後輩たちに呼びかけたところ、集まってくれたのは10名程だったと思います。

いやぁ~セッジ君、実は顔広いんだね!びっくりした!

どういう意味ですか(笑)

いや、セッジ君ってトモダチいないタイプだと思ってた(笑)
失礼な!( ゚Д゚)

それはともかく、デザイン学校で声をかければ漫画が描ける人間は集めやすいだろうと思いますか?

実はそんなことはないのです。

デザイナーは以前記事でも書きましたように、必ずしも絵が描ける必要はないため描けない人もいます。(もちろん描けた方が良いのは確かですが)


この案件の場合、さらに「つけペン」(Gペン、丸ペン、かぶらペンが一般的)の使用経験があるかどうかという条件も加わりますが、これを付け足すとさらに絞られてしまうのです。

10名集めることができたものの、今度は作業場が無いという問題が起こります。

あちこち交渉してエンヤさんが見つけてきた場所は、今件のクライアントでもあるジャパン動画の会議室でした。ここに1~2週間くらい缶詰になっていたような気がします。

ある問題が見つかりその問題を解決すると、そこから別の問題が発生するという連鎖が続き、私と穂波さんとでちょくちょく頭を抱えていたことも覚えています。


撮影作業

原稿の加工作業に終わりが見えてきた頃、また一つ問題が発生しました。

あ、撮影どうしよう?

冒頭で書きましたように、モーションコミックは本来静止画だったものを、動きの演出を加えて動画にしたものです。

これも今の時代はデジタル技術によって難易度は低くなってきています。
しかし当時はこの辺りも全てアナログ手法で行う必要がありました。

当時は私も知識が浅く思い至らなかったのですが、例えばスライドイン(画面の外から絵が入ってくる)などをしたいのであれば、アニメ撮影で使用するマルチプレーン・カメラを使えば良かったのだと思います。


結局のところ、これについては私が所属しているアライブの撮影部で受注することになりました。

例えば、ある絵のコマ(動画のフレームの方ではなく、漫画のコマの方)が右からスライドインして静止したら、次のコマが左からスライドインして最初のコマの横に並ぶという演出があったとします。

マルチプレーン・カメラではカメラは固定されているので、動かしたいコマがある台をスライド移動させるだけです。

しかし、アライブはあくまでも実写映像の会社。
マルチプレーン・カメラがあるわけではありません。

ではどうしたかというと、絵のコマをパネルに貼り付け、カメラはスライダーに取り付けて手動でカメラをスライド移動するという方法で撮影しました。

手動ですからNGが出るたびにやり直しです(^_^;)

また、コマのまわりになにか色を敷きたい、という場合は背景は動画編集時につけることになり、その場合はコマ周辺は透明である必要があります。

しかし当時はアナログですので、コマを貼り付けるパネルの色を青にしていました。
いわゆる、ブルーバック合成という技法ですね。

3人の漫画家さんたちのコマを切り分けたため…、仮に1ページ5コマとしても5x30P=450コマ分のカメラの動きを演出していましたので、うちの会社のカメラマンが半泣きになっていました。

全部のコマがブルーバックなので編集(もちろんアナログ)も大変だったそうです。

このような形で常に全てが手探り状態の行き当たりばったりな作業体験になってしまったのが、私の初モーションコミック制作案件でした。

この後、なんとか納品は無事完了し、大画面に投影されたモーションコミックを見た時はホッとしたものです。


現在のモーションコミックは

さて、現在のモーションコミックはどういう方法で作成されているかと言うと、すべてデジタル映像技術です。

漫画家さんも最近の方はPhotoshopなどを使っていることも多いですから、原画もデジタルデータで貰えるでしょうし、もしアナログで描いていたとしても、現在ならば全てスキャナーでデジタルデータ化してしまいます。

映像処理はAfterEffectsをメインツールとしているところが多いのではないでしょうか。

マルチプレーン・カメラで出来ることはほぼAfterEffectsでできてしまうため、アニメーション制作でもこのソフトが多用されています。

アニメ業界ではマルチプレーン・カメラを使用する工程を「撮影」と呼んでいたため、実質的な撮影はしていなくても、このAfterEffectsで行うカメラ演出的な部分を行う人のことを現在でも「撮影さん」と呼んでいるようです。

これもまたアナログvsデジタルのような二元論ではないのですが、AfterEffectsを使用した工程の場合はどの様に動かしたか、が作業でもプレビューでもわかりやすい事があり、作業効率が上がっていることはメリットと言えるでしょう。

AfterEffectsってなに?と思われた方はぜひ当ブログの講座をご覧ください。
なんとなくどういうことができるソフトかというのが見えてくると思います。



最後に

ということで、今回は自己紹介カテゴリの一つとして、過去に経験した一つの案件の思い出を語ってみましたがいかがでしたでしょうか。

デジタルサイネージの記事でも思ったことですが、私が書く記事のテーマやキーワードだと「初めて聞いた」というようなことが起きてしまうようです。

つまりマイナーなジャンルを選択してしまっているということでしょう。

ただ、マイナーなジャンルは誰かが紹介しなければマイナーなまま終わってしまうことになってしまいます。

ちょっとお仕事として関わったこともありますし、皆さんにそのジャンルを少しでも知ってもらえればと思いまして、僭越ながら記事にさせていただいております。

いずれ「あ、これがモーションコミックだ」というものを目にする機会も増えてくるかと思いますので、こういったコンテンツがあることを記憶にとどめておいていただければうれしいです。

では今回はこの辺で!おつかれさまでした!



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